古屋兎丸のπ

 ひと月ほど前、何気なく手に取った古屋兎丸「π パイ」(ビッグコミックス)が全巻そろい、面白く読了。古くからの兎丸ファンにとっては噴飯ものだろうが、俺にとっては初めての兎丸体験。しかもこの作品、ファンには評判悪いんですよね。それを最初に読むなんて。
 主人公は中学までデブでオタクでおっぱいのことしか頭にない沢木夢人。高校入学までに一カ月のダイエットに挑戦し、美少年に生まれ変わり、理想のπ(おっぱい)を探すことに生涯を捧げようとする健気な(?)高校生。時々、女性のπを悪から守るパイダーマンに変身。
 ヒロインは、もと不登校児で、究極のπを持つ美少女の田村じゅん。夢人の友人となるが、夢人とは知らずパイダーマンに恋をする。学校一の腕力の持ち主。
 この夢人とじゅんを中心に、脇を固めるのが以下の友人。
・宇治一郎……中学時代、夢人が参加していた同人誌「プルプルぱいん」主宰者。夢人と同じくデブだったが、ダイエットに失敗し、高校では文化系女子にまでカツアゲされるいじめられっ子。
加藤鷹士……普段はかわいい男の子。その実態は暴走族のヘッドで、中学時代すでに565人斬りを達成したセックスマシーン。田村じゅんを狙うが、夢人とのバイク勝負に負けて貞操帯をはめられる。父はAV男優の加藤鷲。
・東澤美華……結婚するなら大リーガー級の選手かフランスの実業家。成り上がりを目指すサイボーグπ少女。夢人を毒牙にかけようとする。
・青葉幽那……究極の死離(しり)を探す、お尻フェチのゴスロリ少年。田村じゅんの尻を狙う。夢人たちが通う青葉学園のオーナー子息でもある大金持ち。

 書いていて馬鹿馬鹿しくなってくるけれど、これがこの漫画の真骨頂。ナンセンスな作品が好きな俺にはたまらなく面白かった。漫画読みの師匠であるT原君からは、さほど、という評価を下されたが、全9巻をぜひ通して読んで評価を改めてほしいと思いました。兎丸自身楽しんで書いたというだけに、ギャグ、他作品からの引用もふんだん。この手の作品はもう書かないと思われるだけに、このまま埋もれさせるのは惜しい作品(まぁ、この手のものが好きな人には、という但し書き付きだけど)。

π 8 (ビッグコミックス)

■売れた本
土田よしこ「待ったなし!! よしこはOL」(全3巻・ヤングジャンプコミックス) 1,000円
クリス・ボイス「キャッチワールド」(ハヤカワ文庫SF) 200円