こうの史代の2冊

夕凪の街 桜の国」一冊でファンになってしまった、こうの史代を二冊。一冊目はいまどき珍しい動物漫画の「こっこさん」(宙出版)。飼い鳥ながらふてぶてしい雄鶏のこっこさん(偉そうなのでさん付け)と、小学五年の女の子・やよいをめぐる連作集。スクリーントーンを使わない滝田ゆうばりのレトロな味わいの絵柄が面白可笑しいエピソードとあいまって、さながら絵日記を読んでいるような楽しさ。また続きを描いて欲しいなぁ。


こっこさん


 次は、親同士の話し合いで結婚させられることになったヒロイン・道の、ろくでなしの夫・荘介との日常を描く貧乏話の短編連作「長い道」(双葉社アクションコミックス)。ハートウォーミングなお話を期待されるかもしれないが(そんな雰囲気もあるにはあるけれど)、道と荘介二人には夫婦生活はないし、互いに好きになろうという努力もあまり見えなかったりと、まず普通ではない男女の物語。道には荘介以前に好きな男性がいて、荘介は荘介で隙あらば他の女と逃げることを考えていたりするなど、作品中には二人の関係を壊そうとする毒が見え隠れする。ありきたりの話にしないために実験的な絵柄も次々と試されるなど、作者の意欲も大いに買いたい作品。
 以上、とても満足した二冊。今夜は隣の男の歌声も聞こえず、安心して就眠。


長い道 (Action comics)