守り人シリーズ

 台風の日に、家にいられる幸せをかみしめながら雑用以外は読書。このあいだ図書館に行ったついでに借りてきた、上橋菜穂子の守り人・旅人シリーズを再読。子どもの本のコーナーからゴソッと借りるのは何だか悪い気がしたのだけど、館員の人は「大人で借りられる方が多いんですよ」とのこと。やはりこのシリーズ、文庫化を待つなんて悠長なことを言ってられません。すぐに読みたい! というわけで、「虚空の旅人」「蒼路の旅人」「天と地の守り人」(第一部〜第三部)の都合5冊を借りたのだけど、その日のうちに3冊、翌日に2冊と一気に読み、今日は好きな箇所を読み直している次第。いやぁ、何度読んでも面白い。
「虚空の旅人」では陰謀渦巻く南の国でのチャグムの活躍が、「蒼路の旅人」では囚われの身となったチャグムの脱出行が、「天と地の守り人」ではその苦難の旅路とバルサの登場、救援部隊を率いての故国救出劇が描かれるのだが、素晴らしいのは二人の主人公バルサとチャグムの視点ばかりでなく、周囲の人物の視点からも物語が語られるという、群像劇としての面白さを併せ持っていること。主人公ばかりでなく、他の登場人物に一人や二人は、必ずひいきにしたくなるキャラクターばかりなのです。
 異世界に放り込まれた主人公が宝物を手に入れて故郷に帰るというストーリーは、物語の構造において普遍的なスタイルだが、このシリーズもその王道を行くお話。ちんけな魔法や出所不明のアイテムで主人公が強くなるという昨今のお子様ファンタジーとは異なり、登場人物はすべて普通の人間。意思の力で未来を切り開こうとするところが、大人の読者をも納得させているのでしょう。ファンタジーと聞くだけで毛嫌いする人もいるかと思うが、この本は別格。読まなければ絶対損、子供から奪ってでも読もう!


虚空の旅人 (偕成社ワンダーランド) 蒼路の旅人 (偕成社ワンダーランド (31)) 天と地の守り人〈第1部〉 (偕成社ワンダーランド)


天と地の守り人〈第2部〉 (偕成社ワンダーランド 33) 天と地の守り人〈第3部〉 (偕成社ワンダーランド)