蒼煌

 図書館の本館で久しぶりにCDコーナーを覗き、ジョージ・ハリスンクラウド・ナイン」ほか3枚。借りたい本が見つからず、読書用にと黒川博行「蒼煌」(文藝春秋)、上橋菜穂子「神の守り人 帰還編」(偕成社)。「神の守り人」は分館で借りた来訪編のみ読んでいたので、その続きである帰還編からさっそく読む。結論から言えば、「神の守り人」はシリーズ中、いちばん重く、活劇場面の少ないエピソード。が、このシリーズにはまっている人なら、バルサが出てくるだけで満足というもの。シリーズものの強みですな。いまのところ、俺がベストだと思うのは「蒼路の旅人」。黒川博行「蒼煌」は画壇の裏側を描いたサスペンス風味の小説。殺人事件は起きないので、氏のトリッキーな本格や、あるいは「国境」のようなハードボイルド路線を期待する人には不向きかも。しかし、金や権力欲に取り憑かれた亡者たちが繰り広げる派閥抗争や展覧会での情実審査の内幕、愛人を巻き込んでの騒動はスラップスティックそのもの。登場人物がさらっとした京都弁でどぎついことを言ってるのも効果が増して、ここらへんの面白さはいつもの黒川節全開。モデルとなっている画家や団体などがわかれば読後に謎解きが完成する仕掛けなのかもしれないけれど、俺にはそこまでの知識がないのでそれは断念。しかし、久しぶりに黒川小説を堪能できて満足なのだ。ちなみに、「蒼煌」というタイトルの意味は最後の一行で明かされます。


蒼煌