あかん男

 夜早い時間にT原君より近況の連絡あり。新しい職場で仕事を始めるのは10月からとのこと。これで彼も編集者としては一段階ステップアップ? まずはめでたいのだが、そのあとの話は首相の後継問題などという普通の大人の会話ではなく、漫画、アニメの話題ばかり。本当は俺たち、駄目な大人なのかも。就寝前は、勝手に温故知新読書と一人で銘打った、今はあまり顧みられない作家を読む時間。このところ読んでいる田辺聖子から、短編集「あかん男」(角川文庫)を読了。表題作は、35歳独身のサラリーマン、若はげのせいで頭はすでにスダレ状、20回以上した見合いはことごとく失敗し、会社でも軽く見られているという男の、おかしくもうらさびしい姿をスケッチ風にまとめたもの。憎からず思っている女子社員から呼び出され、いさんで待ちあわせの喫茶店に行ってみると、すっぱかされたうえに、じつは借金の相談だったというお話。そんな仕打ちをされても、腹を立てない自分を「あかん男やなぁ」と自嘲しながら終わるのだけど、この気持ち、わかるなぁ。