サウダージ

 午後、打ち合わせで新宿へ。その行き帰り、垣根涼介サウダージ」読了。柿沢、桃井、アキのトリオに、今回は日系ブラジル人の耕一が加わり、ヤクザとコロンビア人の麻薬取引現場から現金とコカを強奪する作戦。耕一はかつて柿沢から強盗の手ほどきを受けたのだが、ある理由から仲間には加えられなかったという過去がある。その恨みはあるのだが、恋人のコロンビア人売春婦、通称DDをコロンビアに連れ帰るため、どうしても大金が必要になった。情報提供の代わりに、無理を押して柿沢らのチームに加わった耕一と、その強奪の顛末は……、というのが「サウダージ」のストーリー。今回は主人公アキにも恋人・和子ができ、その関係が耕一・DDのカップルと対比されるのだが、人に明かせない仕事をしているのはアキも耕一も同様。しかし、日本に生まれて不自由のない生活を送ってきたアキに対し、耕一はブラジルでも祖国でも差別の対象となる存在。アキの恋人・和子は知的な美人なのに、耕一のDDときたら、ヤルことしか考えてない金に汚い女。あらゆる面で対比される2人だが、今回、小説中でいちばん輝いているのは、耕一・DDのバカップルの恋愛が、最後に美しく昇華されていくところだろう。これには泣けた。バイオレンスが欲しい人には、耕一が犯した殺人でのその死体処理の方法が限りなくエグいので、そちらを期待していいかも。ハード&マッチョ路線の「ヒートアイランド」に対し、恋愛小説テイストも加味された「サウダージ」、どちらを取るかは好みの別れるところだろうが、俺は両方、評価したいです。このシリーズが、悪党パーカー・シリーズぐらい長く続くことを希望。


サウダージ (文春文庫)