マックン急逝

 参りました。しばらく前からパソコンの調子が悪くなっていたのが、木曜日になって完全に動かなくなり、いろいろやってみたけどダメ。メーカーに問い合わせてみると、修理せねばならんでしょうとのこと。書きかけの原稿、それについて集めた資料、保存していた請求・見積関係、もろもろの連絡先、この日記のテキストなど、すべてがパーですわ(ついでに付け加えれば好きなアイドルの画像も)。もう泣くしかありません。原稿を待っているイダテンさんにとりあえず仕事が中断する旨を連絡し、六本木へ取材で外出。帰宅後、昔のマシンを息子から持ってきてもらうが、本体の電源がなぜか入らぬわ、それ以上に、ネットへつなぐのにLANケーブルが接続できないわで、いよいよ新しいマシンを買うしかない状況に追い込まれたのでした。そうして土曜日、近所のパソコンショップで泣く泣く新マシンを購入。お金ないのに……。壊れたマシンだって修理代(5万円)をどうしてひねり出そうか、今から頭の痛いことです。俺みたいにパソコンが仕事の必需品になっている人は、マシンは最低2台必要という教訓を得ました(気づくのが遅いっつーの)。
 そんなこんなで夜はふてくされて本を読むしかなく、以下を読了。


山田風太郎「昭和前期の青春ー山田風太郎エッセイ集成」筑摩書房

 日下三蔵氏による単行本未収録エッセイを集めたもの。第1部の幼年時代を振り返った文章は他のエッセイで繰り返し言及されているエピソードが多く目新しいものはないが、幼年期の但馬の風景が鮮やかに広がる。第2部、第3部は太平洋戦争についての文章だが、「同日同刻」に収録されなかったという「ドキュメント・一九四五年五月」は本書の白眉。一般読者には、これだけでも読んでみる価値あり。


昭和前期の青春―山田風太郎エッセイ集成


佐藤多佳子しゃべれどもしゃべれども新潮文庫

 「一瞬の風になれ」がベストセラーになった佐藤多佳子の、これは1997年の作品。TOKIO国分太一主演で映画化もされたので、落語家が主人公のあれといえば思い出す人もいるのでは。二ツ目の落語家・今昔亭三つ葉が、他者との意思疎通に問題を抱える4人の問題児に落語を教えながら、自身も話芸の壁を破っていくというストーリー。その4人というのが、三つ葉のいとこで吃音に悩むイケメンのテニスコーチ、大阪から転校してきて方言を理由にいじめられている小学生、無愛想な謎の美女、口べたな野球解説者。とくにいいのが、ヒロインの十河五月と、小生意気な小学生・村林優の造形。この2人が落語のお披露目会を開くところでストーリーは閉じるのだが、三つ葉と五月も無事に結ばれ、心地よい読後感が残るのでした。佐藤多佳子の技巧は解説の北上次郎さんが指摘してる通りで、当時の本の雑誌年間ベスト10の第1位もうなずける佳品。これも読んで損なし、というか、「一瞬の風になれ」が青春ドラマで読むのがこっ恥ずかしいという人には、こちらのほうがおすすめかも。


しゃべれどもしゃべれども (新潮文庫)


三浦しをん「きみはポラリス」新潮社

 また三浦しをんで恐縮ですが、これは昨年発行の「恋愛」をお題とした短編集。BL風、ミステリ風、純文風とバラエティにとんだこれらの作品は、さながら三浦しをんの小説技巧のショーケース。どれも軽く書いてるように見えるのだが、それぞれストーリーのツボを心得てるのはさすが。どんだけの本を読んできてるんだ、この人は。


きみはポラリス