貧乏小説はお好き?
最近読んだ本の雑感など。
30代なかば、フリーター・カップルの同居生活を描いた貧乏小説。失業中の男は「タマシイのない仕事はしたくない」とライター兼アルバイターの女に寄りかかり、女はそんな男の言動にむかつきつつも、「テキ電」で知り合った若い男の子との関係が発展することに淡い期待を寄せている。将来に向けて何かを準備しているでもなく、主人公たちの生活は行き当たりばったり。どんどん悪い方向に追いつめられていくーー。ネットで感想を拾い読みすると、「共感できない」からという理由で角田ファンには評判のよくないこの小説。駄目人間を描くのって、そんなに嫌かなぁ。俺からするとマゾヒスティックな快感すらあるんですけど。詳細に記述されるモノの名前や値段、家計簿のように示されるお金の出入りなど、偏執的とすら感じさせる部分がこの小説の肝。さらにラスト、主人公を突き放すような描写に角田さんの恐ろしさというか、凄みさえ覚えました。まったく関係ないけど、角田光代本は池田進吾の装丁がどれも素敵だなぁ。
・斎藤美奈子「文学的商品学」(紀伊国屋書店)「誤読日記」(朝日新聞社)
前者は以前に読んだと思うのだが、あらためて一読。「とばす!オートバイ文学」の項では、片岡義男の描写のテクニックに瞠目。美奈子さん、意外にオートバイ小説や野球小説がお好きなんですね。後者はノンジャンル175冊のレビュー集。実用書の編集者だったというだけに、それらを取り上げた部分だけ読むのも面白いかも。
・河合克敏「とめはねっ!」第3巻(ヤングサンデーコミックス)
鎌倉のお寺での夏合宿を舞台に、大江縁(ゆかり)と望月結希の成長が描かれる第3巻。次の目標は「書の甲子園」だとかで、4巻目も楽しみなんだが、発売は秋とのこと。待ち遠しいなぁ。
ちなみにこの作品、第1回マンガ大賞(マンガ版直木賞)にノミネートされてたんですね。結局、「岳」(石塚真一)が受賞したそうですが、よしながふみ作品が3作同時ノミネートされていたのにはびっくり。
参考:第1回マンガ大賞2008結果 ( )は獲得ポイント
大賞:「岳」(石塚真一、68)
最終選考ノミネート作品
「よつばと!」(あずまきよひこ、49)
「海街ダイアリー1」(吉田秋生、43)
「フラワー・オブ・ライフ」(よしながふみ、43)
「君に届け」(椎名軽穂、42)
「大奥」(よしながふみ、40)
「皇国の守護者」(佐藤大輔作、伊藤悠画、35)
「とめはねっ! 鈴里高校書道部」(河合克敏、27)
「もやしもん」(石川雅之、26)
「夏目友人帳」(緑川ゆき、23)
「ひまわりっ 健一レジェンド」(東村アキコ、20)
「きのう何食べた?」(よしながふみ、19)