さびしいけど素敵

 通勤時間のみの読書で保坂和志「残響」(中公文庫)をようやく読了。薄い本なのに、1週間はかかっているかも。収録作の「コーリング」「残響」とも、主人公が継ぎ目なく変わってゆくという特異な構成。保坂和志自身が、“「自分について語る(評価する)自分」というものの客観的な正否の定めがたさ”と言うとおりの小説で、登場する20〜30代の男女は、過去に同じ会社などで接点のある人物なのだが、それぞれの思いは決して交わることなく、残響のように空間に響いては消えてゆくのみという、読んでてさびしくなってくる小説。「プレーンソング」から続く一連の作品とはかなり肌触りが違うが、俺はこの二作は非常に良いと思う。「孤独」についてこんな書き方があったんですね。


残響 (中公文庫)

残響 (中公文庫)