SF者オールドスクール派その2

 昨日の<日本編>に続き、今日は<海外編>。とはいっても、アシモフハインライン、クラーク、レムなどの巨匠や、ディック、スタージョン、ディッシュ、ディレーニィなどの個性派も、各種ガイドを見ればすぐにオススメ本が出てくるので無視。ブラッドベリ、シマック、フィニィなどをセレクトしても、このへんのノスタルジックな作風は「あ〜、ありがちだね」と言われてしまいそうなのでこれもパス。というわけで、以下は品切れ、または絶版ですぐに読めない本ばかり。題して「くやしかったら探して買って読んでみろ」リストです。


T.J.バス「神鯨」
シロナガス鯨と機械が結合した巨大なサイボーグ漁船「ロークァル」は、人間の手を借りなくては死に絶えていくだけ。そこで、地上では滅亡したと思われる人間の生き残りを探しに、小型ロボットの三葉虫が旅に出る。もー、このイメージだけでお金を払いますよ、という海洋SF。


アレクセイ・パンシン「成長の儀式」
地球滅亡後の宇宙。植民惑星に知識を切り売りすることで生き延びている船に住む人びとの物語。そこでは14歳になると成人になるためのイニシエーションを受けなければならない。主人公の女の子を待ちかまえていたものは……、というお話。


ゼナ・ヘンダースン「果てしなき旅路」
地球に隠棲する孤立した宇宙人たち(外見は地球人とまったく同じ)の、人間たちとのふれあいを描いた「ピープル・シリーズ」として知られる連作短編集。優しい雰囲気の淡々とした作品なので、サイエンスの部分でのハードな描写や、あるいは活劇を求める人にはまったく不向き。好きな人だけ読もう。「果てしなき旅路」はめでたく復刊されたが、続く「血は異ならず」はいまだ絶版。


アルカジイ&ボリス・ストルガツキー「収容所惑星」
地味な作品が続いたので、お次はアクションの要素も兼ね備えたストルガツキー兄弟のこの作品。旧ソビエトの作家、しかもタイトルがこれなんでスルーしている人も多かったのでは。しかし、とんでもない。無茶苦茶おもしろいんですよ! 続く、「蟻塚の中のかぶと虫」「波が風を消す」とともに、「マクシム三部作」と呼ばれております。


フィリップ・ホセ・ファーマー「階層宇宙シリーズ」
俺のなかではファーマーは十分、メジャーな作家なんだけど、なぜか日本では人気がありません。本作は、ギリシャ神話の世界、ネイティヴ・アメリカンの世界、中世騎士の世界などが、階段状に積み上げられた「階層宇宙」という奇っ怪なイメージの中で繰り広げられる冒険活劇。残念なことに、本シリーズは第4巻まで出て、その後の翻訳は中断。早川じゃなくてもいいから、どこか続きを出してくれい!


エドガー・パングボーン「オブザーバーの鏡」
1万年前から地球に住み、人類の進歩を見守る火星人。小説ではその観察対象が少年で、オブザーバーたる火星人との出会い、別れ、少年自身の成長が語られる。どこがどういいのかと言われると説明に困る作品なんだが、いいいんですよ! というしかない作品。創元推理文庫版での題名は「オブザーバーの鏡」だが、早川SFシリーズでは「観察者の鏡」となっています。


ウォルター・テヴィス「ふるさと遠く」
最後はまた地味な作品で。これは映画「地球に落ちてきた男」や「ハスラー」の原作者として一般には知られるウォルター・テヴィスの、ロマンティックな作品集。表紙もよかったんだよなぁ。訳は伊藤典夫黒丸尚だし。


他にもボブ・ショウ 「去りにし日々、今ひとたびの幻」とか、クリス・ネヴィル「槍作りのラン」とかあるんですけどね、この辺でやめておきます。