やっぱり蛇は苦手

 昨日、今日と12月並の寒さだとか。仕事をする気力が起こらず、猫のようにじっと丸まって過ごす。気分一新、新しい仕事に取りかかるはずが、やっぱり俺は単なる駄目男と実感。昨晩はランズデール「ボトムズ」(ハヤカワ文庫)読了。老人ホームに暮らす80歳の主人公が、10代の頃に巻き込まれた殺人事件の顛末を回想するという筋立て。舞台はこれまでのランズデール作品と同じく、テキサス東部。時代は大恐慌の1930年代前半。人種差別は現代より根強く、黒人は白人の住む町のはずれに寄り添いながら暮らしている。ある日、主人公の少年が木に吊るされた黒人女性の全裸死体を発見するのだが、それが連続殺人事件に発展。被害者は黒人ばかりだったのに、白人女性の死体が発見されるに至り、犯人は黒人と決めつけた白人の黒人への迫害が始まる……。事件の過程で治安官としての自信を失っていく父と壊れてゆく家庭、いわれなき罪で迫害を受ける親しい黒人、それらを少年の目で追っていく、ミステリ要素よりも普通小説の味わいが濃く出た作品。自然が豊かだった頃のテキサス東部の描写が美しく、かつ不気味。蛇が一等苦手な俺には、ランズデール作品の名脇役ヌママムシが随所に出てきて、これがたまらんほど嫌な気分にさせてくれましたが。犯人は初めのほうでおおよそ見当がついてしまうけれど、骨太なストーリーにノスタルジックな雰囲気はもちろん、少年の家族のその後がさりげなく語られるラストがこれまたいい。


ボトムズ (ハヤカワ・ミステリ文庫)