ダークライン

 ランズデール「ダークライン」(ハヤカワ文庫)読了。主人公がかつての子供時代の出来事を回想するというスタイルは前作「ボトムズ」同様だが、今回の時代設定は1950年代末。ラジオからはロカビリーが流れ、主人公の少年の家はドライブ・イン・シアターを経営している。ある日、家の裏の森で古い日記と手紙の束を見つけたところから、かつてこの町で起きた事件の数々を知ることになる。が、それは少年とその家族に災厄をもたらすきっかけにもなっていく。ランズデール作品ではすでにおなじみになった人種差別問題、町はずれに森と沼が広がるテキサス東部の自然、友人との出会いと別れ、大人になるための通過儀礼、そして父性などのテーマが重層的に進行していくのは「ボトムズ」と同じだが、「ダークライン」では少年の成長物語により力点が置かれ、時代背景も現代に近いことから、いっそうノスタルジックな作品となっている。NWA(アメリカ探偵作家クラブ)賞を受賞した「ボトムズ」はたしかに重厚な傑作だと思うが、リーダビリティーは「ダークライン」が上。スケール感の小ささは否めませんけど、個人的には俺はこちらのほうを買います。あ、でも、どちらを読んでも絶対損はしませんよ。これで、手元にあるランズデール作品はすべて読んだわけだが、これらはいずれもブック○フですべて105円で買ったもの。計525円、たっぷり堪能させていただきました。


ダークライン (ハヤカワ・ミステリ文庫)