夢の守り人

 図書館の児童書コーナーで借りてきた上橋菜穂子「夢の守り人」(偕成社)読了。これで「守り人」シリーズはすべて読んだことになるのだが、本作はシリーズ中、一番地味な作品かも。ストーンズのアルバムでいえば「ビトウィーン・ザ・バトンズ」、ツェッペリンでいえば3枚目のような位置づけ? 乱歩の「うつし世は夢、夜の夢こそまこと」じゃないけれど、夢を操る精霊を相手にするだけに、手触りのない、もどかしい感じが全編に漂っている。寝ているときに見る夢の心地よさにくらべ、現実世界で抱く夢は希望と挫折の繰り返し。それらが登場人物ごとに重層的に織りなされ、一見平易な小説ながら、重い主題を含んでいる。アクションもいつもより控えめだが、そこはそれ、随所にハッとさせられる上橋節とでもいうべき表現や、バルサとチャグムの再会など、ファンにはうれしい見せ場も用意されている。が、それでも評価の難しい一冊には変わりないかも。


夢の守り人 (偕成社ワンダーランド)