僕の小規模な生活

 ブック○フへ行くと単行本500円均一セール開催中。せこい性格なので、単価の高い商品から探し始めるのだが、めぼしい本はなし。ようやく、文遊社の鈴木いづみコレクション2冊を拾い上げ、その後はいつもの105円コーナーで三浦しをん多和田葉子桐野夏生などをピックアップ。気がつけば今日の買い物は女性作家ばかりとなってしまった。が、そんなことより、言っておかねばならないのは福満しげゆきですよ! 昨年末に出た「僕の小規模な生活」(モーニングKCDX)を読んでびっくり。どうかと思うが、早くも俺の2008年ベストに挙げておきたいほどの作品だ。


僕の小規模な生活(1) (KCデラックス モーニング)


 雑誌アックスでは既におなじみの作家なのだが、ガロ系からはずっと離れていたので気づきませんでした。こんな作家が育っていたんですね。「僕の小規模な生活」は、駆け出しの漫画家(といっても青林工藝舎から5冊の著書を上梓している)が、メジャー誌にデビューするまでの生活と創作の苦労が私小説風につづられる、いわば「私漫画」。生活能力のない主人公と若妻の生活を軸に、アルバイトでの失敗、出版社への持ち込み、妻との諍いなどが、フィクションとは銘打ってあるものの赤裸々に描かれている。こうした身も蓋もない話には辟易する読者もいるはずだが、20代後半から30歳前後の等身大の男がここには精確にトレースされ、大部分は共感を呼ぶものと思われる。働かないで夢を追う男に妻がブチ切れ、夫に暴力をふるうシーンなど、読んでいて経験者(?)には辛くなるほど。が、それらを救い、メジャー誌の漫画にふさわしいテイストにしているのが福満の絵。堅実で丁寧な描き込みは、ここまで相当な修練をしたのだろうと窺わせるに十分な筆力だ。じつは大変な努力の人ということがわかる。
僕の小規模な生活」に感心してしまった俺はすぐに本屋へと走り、高校時代から漫画家デビュー前を描いた「僕の小規模な失敗」(青林工藝舎)を購入。こちらも素晴らしい作品でした。今月末には、アックス連載中の「生活」が発売されるようでそちらも楽しみ。


僕の小規模な失敗