高所恐怖症には無理なスポーツだが…

 気がつけばこのところ読んでいるのは女性作家の作品ばかり。しかもスポーツ小説だ。昨晩読み終えたのは、森絵都「DIVE!!」(角川文庫)。都内のダイビングクラブに所属する少年3人が、クラブの存続とシドニー・オリンピックをかけて競い合うというストーリー。類いまれな動体視力(ダイヤモンドの瞳)と柔らかい身体(二重関節)を持つ中学生の知季(ともき)。津軽で育ち、天才ダイバーの祖父の血を継ぐ野生児の高校生、飛沫(しぶき)。オリンピック選手を両親に持つ、エリート高校生の要一(よういち)。この3人に、アメリカ帰りのコーチ・夏陽子(かよこ)や他のライバル、それぞれの家族、恋人などが絡み、友情、嫉妬、信頼、勇気などさまざまなテーマが重層的に織りなされていく。恥ずかしながら森絵都の作品を読むのはこれが初めて。さすがに早くから注目されていた作家だけに、上手いです。3人のうち誰がオリンピックに行けるのか、読んでいるうちに贔屓の男の子ができるはずなので、最後の選考会はドキドキもの。ちなみに、この作品の発表は2000年から2002年にかけて。佐藤多佳子「一瞬の風になれ」(2006年)、三浦しをん「風が強く吹いている」(2006年)など、昨今の女性作家が描く青春スポーツ小説の嚆矢となった作品といってもいいですね(それ以前は、あさのあつこ「バッテリー」があるけれど、完結したのは2005年)。それにしても、女性作家が王道の青春小説を書いているのに、男性作家はどうしちゃってるんでしょう。


DIVE!! 上 (角川文庫) DIVE!! 下 (角川文庫)