朝、目が覚めると…

 皆さんは朝、目がさめると全裸になっていませんか? 最近の俺はそんな感じで朝を迎えておるのですが、日記が滞っている間にそんなことばっかりやっているわけでは決してなく、この夏はいつになく必死に働いているというのが偽らざるところ。先月まで取材と原稿書きに追われていたのに、今月は毎日神保町の編集プロダクションに通い、しこしこと校正をやったり、原稿を書いたりしているのです。もー、こんなに真面目な俺を褒めてあげてやりたいくらい。が、収入が伴わないのはどういうわけかなぁ? 不思議。。。
 ま、とりあえず全裸健康法(?)で元気にやっておりますが、この間、俺の身に起きたこと、いまも起きていることはまだ少し書く気にはなれないので、ここ2カ月間に読んだ本のメモでご勘弁下さい。最近読んだものからさかのぼっていきます。


三浦しをん「仏果を得ず」双葉社

 文楽の若手太夫が芸に賭ける青春(といっても三十になんなんとする男ですが)を描いた、ラブコメディ。三浦しをんの読者のくすぐり方もだいぶこなれてきました。氏のエッセイを好きな方なら楽しめること必至。そうでない方もぜひ読んでくだされ。


仏果を得ず


畠中恵「うそうそ」新潮社

 畠中恵しゃばけシリーズは、この2カ月間で第1作目の「しゃばけ」、あいだをかなり飛ばして6作目の「ちんぷんかん」を読んだのだが、今回は5作目の「うそうそ」。なんでこんな変則的な読み方になったのかというと、それは図書館にあるものから借りていったらこうなってしまったのです。俺の家にも鳴家達がいてくれればいいのになぁ。そうすれば毎日が楽しくなるのに。


うそうそ しゃばけシリーズ 5


梨木香歩西の魔女が死んだ新潮文庫

 前から読んでみたいと思っていた梨木香歩。評判にたがわず、いいお話でした。風景、季節、人間関係のさりげない描写など、いずれも素晴らしい。野いちごのジャムを作るシーンがあったが、俺も昔、母親がつくってくれたのを覚えています。でもちょっと失敗して焦げ臭さが残っておりました。しかし、野生の力強さはあったなぁ。小説のラスト、オヤジも泣けました。


西の魔女が死んだ (新潮文庫)


・小川糸「食堂かたつむりポプラ社

 ブック○フでたまたま105円コーナーに落ちていたのを拾ったもの。10万部以上売れてるそうですが、これは……。ネットでの評判にたがわぬ未熟な作品でした。舞台の設定、季節感、食材などの小道具、周囲のキャラクターなどなど、どれも語り手の都合に合わせて繰り出してくるものだから、滅茶苦茶とまではいわないけど、芯の通らないお話になってしまった。皮肉もその分、作者の世界観はいやというほど伝わってくるのだが。編集者、なんとかできなかったんだろうか。この作品を読んでから「西の魔女が死んだ」を読んだのだけれど、プロとアマチュアの差は一読瞭然。表紙はすごくいい……。


食堂かたつむり


保坂和志「明け方の猫」中公文庫

 ある朝、目が覚めたら全裸になっているのは俺ですが、この作品の主人公は、自分が猫になっている夢を見ているのです。猫はどんなふうに歩みを進めるのか、四本足で歩くことから始めて、主人公は猫の肉体を次第に自らのものとしていく。猫の視点で世界はどのように見えるのか、そこでの発見と考察が半分猫になりかけた主人公によって語り続けられていく。保坂和志の小説を初めて読む人にはすすめられないかも。


明け方の猫 (中公文庫)


角田光代空中庭園」文春文庫

 角田作品では著名なので、いまさら俺がいうことは何にもないです。傑作。


空中庭園 (文春文庫)


橋本治「さらに、ああでもなくこうでもなく 1999/10ー2001/1」マドラ出版、「日本が変わってゆく」の論ーああでもなくこうでもなく マドラ出版

 橋本治広告批評に連載していた時評2冊。橋本治の頭の強さをあらためて思い知らされる。自分の頭で考えるとはこういうことという見事な見本。しびれる。


さらに、ああでもなくこうでもなく 1999/10‐2001/1 「日本が変わってゆく」の論―ああでもなくこうでもなく 3