勾玉三部作

 この休み中に読もうと借りてきていた荻原規子勾玉三部作。「空色勾玉」は以前に読んでいるので、残る二作「白鳥異伝」「薄紅天女」を昨日、今日と読みふける。神代から天平に至る時代を背景に、勾玉と剣をめぐる伝説、恋と冒険を描いて無茶苦茶おもしろい。が、この作品の息が長いのは、思春期の少年少女の恋ばかりではなく、光と闇、生と死、善と悪、支配と非支配、中心と周辺、理性と感情などさまざまな二項対立が周到に張りめぐらされており、この作品がどの世代に対しても訴える箇所が万華鏡のように変わるところだろう。そうした仕掛けだけでも一筋縄ではいかない作品なのだが、一方で、何にも考えなくても物語のたゆたう海に身をまかせてもいいのがすごいところ。荻原規子は児童文学の世界では大のつくメジャー作家だと思うが、メインストリームでももっと言及されてもいい作家だろう(本好きの人ならとっくにご承知でしょうけど)。お正月の読書としてひととき幸せな時間を過ごしました。