となり町戦争

 眠れぬ夜の読書、今晩は三崎亜紀「となり町戦争」(集英社文庫)。ある日、となり町との戦争が広報誌に告知されていた、という魅力的な書き出しで始まるこの作品。ラノベ的な展開を期待しちゃいけません。作者の狙いは見えない戦争をどう書くかということに絞られているため、主人公の内面の変化と、微妙にずれを生じさせつつある二つの町の描写に終始しているからです。ですから派手なドンパチがあるわけでもなく、人間同士が殺し合うこともありません。それは暗に示されるだけ。そうした点で肩透かしをくわされた読者のレビューがAmazonで反映されているのでしょう。俺には、こんな手もありかなというぐらいで、他の作品でも寓話的手法を採っている作者の今後には期待したいところ。どうしても具体的な「となり町との戦争」が読みたければ、筒井康隆永井豪「三丁目が戦争です」を読むことをオススメします。もちろん、この作品があるからこそ、となり町との戦争を思いついた時点で、他の作家は違う方法を模索しなければならないわけですが。


となり町戦争 (集英社文庫)


三丁目が戦争です