狐笛のかなた

 図書館に資料を探しにいったところ、目的のものは見つからず、代わりに借りたのは上橋菜穂子「狐笛のかなた」(理論社)。「守り人」シリーズと舞台はうって変わって中世日本。狐と少女の恋の行く末を描いた美しい作品で、おじさんはこれにもやられてしまいました。領土をめぐる国同士の争いにどう決着をつけるか、憎悪の連鎖を断ち切る領主の決断も読みどころではあるが、やはり、ラストのヒロインの決断がこの物語のすべて。やっと掴めそうになった家族との生活を捨て、人であることもやめてしまうに至った少女の悲しみの深さ。誰にも読みやすい物語ではあるが、突きつけるテーマは結構重いものがありますね。しかし、上橋菜穂子の小説は「守り人」シリーズもそうだけど、食事のシーンがどれも本当においしそうだ。本当にさりげない筆致なのだが、これだけでも並の筆力じゃないことがわかる。


狐笛のかなた