不況がひたひたと

 最近になって知人その他から人員整理の話を伝え聞くようになり、本当に不況なんだなと実感する。俺など自分自身で自分を整理しちゃったようなところがあるので、別の面でしんどいことはいろいろあるのだが、実際、仕事がなくなるというのは不安なことだと思う。学生時代の一時期なら一生遊んで暮らしたいと思ったことはあるけど、そんなことは不可能だとすぐに気がつく。結局は食べるために働かざるをえないのだが、そこのところで折り合いをつけるのが下手な人がどんどん社会からこぼれていってしまうのではなかろうか。身過ぎ世過ぎで格好よく世間を渡っていければいいんだろうけどね。(ため息)
 そんなことを考えつつ読んだ本が三浦しをん「妄想炸裂」(新書館ウィングス文庫)というのがわれながら情けない。いや、三浦さんのエッセイは面白いんですよ。この本を電車の行き帰りで読んでいる俺が、イカしていないと思うのです。




 お次はドナルド・E・ウェストレイク「バッド・ニュース」(ハヤカワ・ミステリ文庫)。昨年末(12月31日)に没したウェストレイクのドートマンダー・シリーズ第10作目。彼の翻訳作品ほぼすべてを読んでいる身としてはちと寂しいですが、本作の出来は決して良くはない。スピード感に欠け、ドタバタもいまいち乗り切れてない。でも、シリーズの続きが読めるだけでファンとしては幸せなんです。


少女ファイト

 今週も漫画ばかりで、普通の書籍は梨木香歩「水辺にて」(筑摩書房)のみ。イギリス、アイルランド、日本の海、湖についての考察を含む、カヤック乗りの面白さを伝えるエッセイ。




 映画の評判はまだ伝わってこないけど、一条ゆかり「プライド」(クイーンズコミックス)の10巻が出た。萌の身ごもっている子の父親は誰かが明らかになり、それを嗅ぎ付けた母親はどう出るか? というところで次巻へ続く。この漫画に関しては表現の新しさ古さがどうのこうのではなく、王道を行く少女漫画としてストーリーを評価するしかないっすね。




 昨年出ていたのを知らなかった古谷実ヒメアノ〜ル」(第1巻・ヤンマガKC)は、前作「わにとかげきす」の主人公、環境をそのままスライドさせて作ったような作品。違うのは1巻から早くも役者が出そろい、殺人事件の予兆がありありなところ。マンネリと叩く人もいるだろうが、このテーマで納得のいく作品を描くという作者の決意かもしれず、今回も俺も最後まで付き合います。




 田丸浩史ラブやん」(アフタヌーンKC)も11巻になり、ロリ・オタ・プーの主人公カズフサもついに一人暮らしを開始(ラブやんも一緒だが)。いつものギャグのパターンではあるのだけど、はまっている身としてはついつい買って読んじゃうのである。




 最後は待ちに待った(半年以上待った)、日本橋ヨヲコ少女ファイト」(イブニングKC)の第5巻。今回は大阪遠征の試合シーンが中心でキャラクターたちの活躍が大いに楽しめる。が、また次の巻が出るまでに半年以上待たねばならないのか……。


オバマ祭り

 仕事のあと横浜で飲んでいて、トイレに入るとボスから電話。ズボンをずりあげながら話を聞くと、明日掲載予定のオバマ大統領の就任演説の概訳とエッセイ、朝9時半までにアップせよとの指令。早く家に帰るようにと言われるが、一人のんべえがいて、なかなか帰してもらえず、結局、家にたどりついたのが12時近く。急いで同時通訳の人に電話して、今日は徹夜ですからよろしくお願いしますと依頼。風呂に入って酔いを醒まそうとするものの、4人でビール、ワイン2本などを飲んでいたので、演説が終わる頃には睡魔が急激に襲ってくる。どちらにしろ俺の仕事は原稿を受け取ってからなので、仮眠を取ろうと思って横になる。ようやく酒が抜けてきた朝6時に起き上がり、ファックスで受け取った原稿をテキスト化する作業に着手(同時通訳の先生はいまだに手書きなので、俺はテキストのベタ打ち要員というわけです)。9時過ぎにようやく終わり、デザイナーさんへ送信。なんとか9時半のサイトへのアップが間に合った(この時点で、ウェブではたぶん通信社配信の概訳より早いアップを達成)。目を真っ赤にしたまま出社すると、今度は全訳の指令が! 午後、同時通訳の先生に会社にきてもらい、先生が1枚仕上げるたびに、俺がそれを読みながらテキスト化する作業を始める。オバマ大統領の就任がこんな極東の片隅に住む俺の生活に影響するとは……。ようやく全訳が終わった頃には、先生も俺もふらふら(俺は酒の影響もあったのだが)。こうして演説後24時間以内に、概訳、全訳、エッセイの3本の企画がアップされたのが、はたしてPVの結果はいかに?

テレビ雑感

 先週1週間は酒(ホッピー)を飲み過ぎたり、風邪をひいたりで不調。今日、やっとのことで体調が戻ってきた。年をとるとはこういうことですか。無茶はできないですね。さて、新しいドラマやアニメが始まりましたが、松山ケンイチを「銭ゲバ」にぶつけてくるとは。キャスティングはぴったりかも。ジョージ秋山の原作では「貧困」はもちろんだけど「公害」がもうひとつのテーマになっていた。いまの時代では「格差」ということなんですね。ジョージ秋山では鬼頭莫宏「ぼくらの」が「ザ・ムーン」のリスペクト作品だが、時代を超えてよみがえってくるジョージ秋山。ウルトラ級に救いのない「ばらの坂道」も、ぜひ復刊してほしいもの。その他のドラマはとくにこれというのが今季はないみたいですが、おやじは「メイちゃんの執事」が結構楽しみだったりして。




 アニメでは上橋菜穂子原作「獣の奏者エリン」がうれしい作品。プロダクションI.Gによる絵本のような背景がいい。また、上橋ファンにとっては、「獣の奏者」の続編がこの夏刊行されるというのがビッグニュースですね。今から楽しみ。




 そんなドラマ、アニメ漬けになっている俺でも少しは本も読みました。岸本佐知子「ねにもつタイプ」(筑摩書房)。単なるエッセイにとどまらない、不思議な味わいのある短編、ショートショートの原石がずらり。書けそうで書けないんですよね、この手の文章って。




 もう1冊はお決まりですがマンガ。今回は、全編が切り絵で描かれたトンデモ作品、梅吉「一杯では終われません」(モーニングKC)。中を見たらびっくりですよ、これ。絵はもちろん、吹き出しのネームまで切り絵なんだから。


町でうわさの天狗の子

 もー、岩本ナオ、最高っすよ。「町でうわさの天狗の子」第1巻から最新の第3巻までを読んだけど、この不思議感覚はどう言ったらいいのやら。主人公の高校生・秋姫は、天狗と人間の間に生まれた女の子。町の人もそのことを皆知っており、それが当たり前に受け入れられているという土地で育った。ちょっぴり大食いで怪力なのが普通の子と違うところだけれど(側溝にはまったトラックをひょいと持ち上げたり、体育館の鉄扉をはずしたり)、普段はどちらかというとぼんくらの類に入る女の子である。その秋姫が同じくぼんくらだけどイケメンのタケル君に恋をするのだが、タケルには浅からぬ因縁があった……。脇を固める、天狗になる修行中の幼なじみの瞬、人語をしゃべる眷属のキツネ、タヌキ、ウサギ、イノシシに加え、奇天烈な髪型で漢(おとこ)ぽいクラスメートなど、まわりもユニークな面々が勢揃い。やさしく、楽しい不思議な世界を作り出している。続きが早く読みたいなぁ。


熱血少女かるたマンガ

 今日も少女マンガ。競技かるたを題材とした、末次由紀ちはやふる」。福井からの転校生・新(あらた)との交流によって、未来のかるたクィーンを目指すヒロインの千早(ちはや)の物語。見所は、人並みはずれた聴覚の持ち主である千早の、バトル並みに熱い闘いのシーン。少女マンガのきめ細かい心理描写と少年マンガの熱気を足したような、ジャンルからはみ出す作品。すでにいろんなところでべた褒めされている話題作だが、末次由紀、これでマンガ界に完全復帰ですね。現在3巻まで発売中。


渋谷にて

 夜、K川グループのA藤君と待ち合わせて渋谷で食事。道玄坂の小径を入ったところにある中華のちっちゃな人気店G。1人1980円のコースを頼んだのだが、男2人でも相当な量。紹興酒をボトルで頼んでも、2人で6000円未満。めちゃ安です。これは繁盛しますわ。帰り際、斜め前のテーブルに、チャーリーこと社会学者の鈴木謙介を発見。チャーリー、ちっちゃくて見た目かわいかったすよ。